複雑・多様化する地域の課題を解決するために、企業・NPO・町内会・行政など、様々な主体が連携してより良い地域づくりを目指す「共創」が注目されています。そこで、共創の先行事例として実績のある2つの団体が、地域での取り組みと成果、これからの可能性などについて報告する公開収録を2023年9月22日に開催しました。
共創ケーススタディ公開収録 概要
日時:2023年9月22日 17:00-18:30
料金:無料
定員:30 名(先着順)
場所:横浜市役所市民協働推進センター 協働ラボ
アクセス:みなとみらい線「馬車道駅」1c出口 直結 / JR「桜木町駅」新南口(市役所口)徒歩3分 / 地下鉄「桜木町駅」「1口」から徒歩3分
プログラム
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- 開会の挨拶
- KUSCの農業福祉スポーツの取り組み
- 団地暮らしの共創(すすきの団地)の団地と福祉の取り組み
- よこはま共創コンソーシアム代表より
1. 開会の挨拶
本イベントの司会は、NPO法人横浜スタンダード推進協議会の江森克治(えもり・こうじ)さんが努めました。
江森さんは、「横浜市内で今まさに進行中の取り組み実例の紹介を通じて、『共創とはこういうものなんだ』という理解を深める時間にしたいと思います」と、本イベントの開催の趣旨について紹介しました。
2. KUSCの農業福祉スポーツの取り組み
一つ目の事例紹介は、特定非営利活動法人KUSC(以下、KUSC)の藤森茂和(ふじもり・しげかず)さんによる竹山団地の取り組みです。
KUSCは、主に神奈川大学サッカー部の活動を支援する団体です。地域の様々な団体と連携し、社会参加の機会を創出しながらまちづくりの推進にも積極的に関わり、人と地域を結ぶ一助となる事業を行っています。
活動拠点は、横浜市緑区にある竹山団地です。学生が同団地を寮として活用しており、サッカーに勤しむだけではなく、地域社会との交流により多様な経験を養うことを目指しています。
藤森さんは、「竹山団地が出来上がったおよそ50年前には人々が憧れる団地でしたが、社会全体の人口減少の波は竹山団地にも押し寄せ、コミュニティの姿が変わってきました」と述べました。高齢化と相まって遊休資産の増加も、地域の課題として顕在化しているそう。
KUSCでは、団地の20部屋を寮として借り、サッカー部員3人で1部屋に住んでいます。
自治会や消防団への参画に加え、敷地内の空きテナントを学生自らリノベーションし、食堂に生まれ変わらせる取り組みなどを通じて、学生たちは既存のコミュニティに溶け込んできたといいます。
最近では、空き施設の有効活用に向けて多目的ホールやジムの設置にも動き出しているそうです。
藤森さんは「共創コンソーシアムでの取り組みを通じて、市内の他の団地との協働を模索したり、外からの視点を取り入れたりできるよう進んでいきたい」と述べました。
3. 団地暮らしの共創(すすきの団地)の団地と福祉の取り組み
二つ目の事例紹介は、一般社団法人団地暮らしの共創(以下、団地暮らしの共創)の小柴健一(こしば・けんいち)さんによるすすきの団地の活動です。
団地暮らしの共創は、横浜市青葉区にあるすすきの団地の住民が主体となって活動する団体です。団地の抱える課題の解決を通じて、新しい暮らしと地域循環型経済の仕組みを共に創りあっていくことを目標としています。
すすきの団地のある地域は、多くの団地が密集している大規模団地エリア。徒歩圏内に、2030年に市営地下鉄線の新駅の開業が予定されており、今後の可能性が期待されています。
しかし、すすきの団地の現在の高齢化率はおよそ48%。1460人弱の住民を抱えているものの、単身世帯も増えており、介護や孤独死、相続など様々な課題が浮き彫りになってきているといいます。
小柴さんは、「分譲団地は各戸の持ち主が異なっており、ルールの変更にも建物のリノベーションにも持ち主たちの合意形成が欠かせません。」と語りました。
集団での合意形成の難しさはもちろんですが、住民の高齢化が進んでいるため家主が不明の部屋があったり、家主が亡くなった後の回復費用の捻出ができなかったりと、課題は複雑だということです。
人口の高齢化と設備の高経年化は全国的に進んでいるため、すすきの団地が直面している喫緊の課題が、今後は全国的な課題になっていくかもしれません。
すすきの団地では現在、団地内の清掃や広報活動など、管理組合が委託する形で団地内に雇用を生み出すことで、収入源として経済を回しているそうです。
他にも、近隣の子ども会と協力することで、子ども達の過ごす場所や機会の創出にも努めているということです。
小柴さんは終わりに、「法律やルールといった壁に阻まれることも多いけれど、今描いているすすきの団地の未来を実現するために共創と協働の取り組みを進めていきたい」と述べました。
4.よこはま共創コンソーシアム代表より
事例紹介の後は、よこはま共創コンソーシアムの代表を務める株式会社トラストアーキテクチャの前川知英(まえかわ・ともひで)さんのご挨拶です。
「技術革新や情報技術(DX)により、これまで行政やNPOが担っており収益化が難しいと思われていた部分が、リビングラボ等の公民連携の取り組みにより事業化・収益化可能となってきています。我々はこうした課題をビジネスの種ととらえ、課題の分類・見える化・指標化し、多くの主体をネットワーキングすることで課題のビジネス化を伴走支援しています。
本コンソーシアムに参画するメリットには、若い人との交流の機会の創出、地域との繋がり強化、そして地域課題解決への共創的活動の体験およびイノベーション人材の育成、があります。横浜市との協働契約のため、課題は大量に仕入れることができます。ぜひ多くの企業様に我々の取り組みへご協力を頂ければありがたいです。」
開催後記
今回の公開収録では、団地における取り組みをご紹介しました。本コンソーシアムでは共創・協働によって地域課題の解決を目指す事例の先駆けとなるよう、引き続き活動してまいります。
次回イベントは、10月5日に開催予定のイベント「共創ダイアログ」です。
このイベントは、減少する人口、複雑化・多様化する社会課題。新しい解決の糸口を見つけるために、それぞれのフィールドで課題解決に取り組む行政、NPO、公益団体、企業などが集い、対話を通じて「それぞれができること」を考え、共創につなげるダイアログです。
参加申し込みは不要です。ぜひお気軽にご参加ください!